初めて熊本県立劇場へコンサートに訪れる人を対象に、会場までのアクセスや施設の概要、現地での楽しみ方について紹介します。
「日常に、劇場を。」をスローガンに40年超。2つのホールで地元に親しまれている文化芸術拠点。
会場までのアクセスは、桜町バスターミナルを攻略するのがカギとなります。
熊本県立劇場は、クラシック音楽を中心にした音楽専用の「コンサートホール」と、オペラ・演劇などの舞台芸術に対応できる「演劇ホール」の2つのホールを備える劇場で、1982(昭和57)年にオープンしました。
「日常に、劇場を。」をスローガンに、「ケンゲキ」の愛称で市民に親しまれている建物の設計は、ル・コルビュジエに師事し、弟子に丹下健三などの名だたる建築家を要するモダニズム建築の巨匠・前川國男氏が担当し、建物は日本音響家協会による「優良ホール100選」にも選ばれています。
その緻密な建築設計のおかげで、2016(平成28)年4月に発生した熊本地震で大きな被害を受けたものの、致命的な損傷はなく、2022(令和4)年に開館40周年を迎えました。
今後、施設や設備の老朽化に伴い、2023(令和5)年11月から2024(令和6)年3月にかけて改修工事が計画されており、その間は休館となります。
歴代館長は、元NHKアナウンサーの鈴木健二氏や、地元出身の政治学者で現職の姜尚中氏など、有名人が招聘され務めています。
飛行機、鉄道、市電、バスなど、様々な交通手段を駆使してアクセスすることになります。ライブ遠征的には、宿泊時のホテルの場所選びも含め、アクセスに戦略性を問われる会場の1つだと思います。
熊本県立劇場までのアクセス
桜町バスターミナルの攻略がカギ!
初めに断っておきます。この会場のアクセス拠点は、新幹線の停車するJR熊本駅でも、空の玄関である阿蘇くまもと空港でもありません。ずばり「熊本桜町バスターミナル」です。
桜町バスターミナルは、再開発事業でそれまで営業していた熊本交通センターの跡地に、2019(令和元)年にオープンした複合商業施設「サクラマチクマモト(SAKURA MACHI Kumamoto)」の中核店舗です。日本一の規模を誇るバスターミナルで、地元交通事業者の九州産交グループが運営しています。
新幹線や空港バス、市電も含め、「すべての交通機関は桜町バスターミナルに通じている」という点を押さえておくのがポイントです。
会場最寄り駅は、JR水前寺駅と市電の「味噌天神(みそてんじん)」電停です。また、会場のすぐ前に「県立劇場前」バス停があります。
今回は、この2つの最寄り駅に到着するまでの新幹線・空港からのルートと、それぞれ会場までの徒歩ルート、及び桜町バスターミナルから「県立劇場前」バス停までのルートについて紹介します。
阿蘇くまもと空港からのバスルート
まずは、阿蘇くまもと空港まで飛行機で来た場合のバスルートの説明です。
空港リムジンバスを使って熊本市街に向かうことになりますが、会場最寄りのバス停は「味噌天神」バス停で、市電の「味噌天神前」電停の目の前に停まります。
まずは空路で熊本空港へ。天気と方向が良ければ、窓から阿蘇山が見えます。
阿蘇くまもと空港の1階到着ロビーに到着しました。
そのまま出口から外に出て、バスのりばを目指します。
出口を左に曲がると、熊本市街へのバスのりばがあります。
熊本市内方面へは、4番のりばから発車します。
のりば近くに切符うりばがあります。クレジット対応で、各種交通系ICカードも使えます。
最寄りの味噌天神バス停までは片道780円。桜町バスターミナルまでは880円、熊本駅前までは960円です。
味噌天神バス停は、空港から7〜8つ目の停車場です。
バスは日中、1時間に3〜4本程度運行しています。
リムジンバスの車内です。座席にコンセントは付いていませんでした。
はじめの方でアリーナクラスの会場「グランメッセ前」にも停車します。私が行った翌月には、小田和正や米津玄師のコンサートが開催されるようでした。
味噌天神バス停までの所要時間は約30分です。
「味噌天神前」バス停に到着しました。この日の私は日帰りで熊本遠征を実行したので、ここから徒歩で会場まで向かいました。
リムジンバス 運賃改定について
残念なお知らせですが、2023年6月1日から、物価高による輸送コスト増加に対応するため、運賃の値上げを実施する発表がありました。この結果、「味噌天神」「桜町バスターミナル」「熊本駅前」までの運賃は、それぞれ次のとおりになります。
味噌天神 900円(←780円)
桜町バスターミナル 1,000円(←880円)
熊本駅前 1,000円(←960円)
味噌天神及びJR水前寺駅からの徒歩ルート
ここでは、空港リムジンバスの味噌天神バス停とJR水前寺駅から、それぞれ徒歩で会場に向かうルートを紹介します。
所要時間は、味噌天神バス停から会場までは徒歩約15分、JR水前寺駅から会場までは徒歩約8分です。
味噌天神バス停・電停からの徒歩ルート
バス停に着いたら、市電の電停のそばにある横断歩道を渡りましょう。渡った先を右に曲がり、JR水前寺駅方面に向かいます。
バス停のすぐ近くに、名前の由来になった「味噌天神宮」があります。
横断歩道を渡った後、右に曲がったところです。
ほどなく五差路のような場所に出るので、手前ではなく奥の道路に進みます。
正面に洗車と車のコーティングの店がある交差点を左に曲がります。
しばらく道なりに移動します。
運行本数のほとんどないバス停の前を通過します。そばに案内看板があります。
しばらく進むと、大きな通りとの交差点に出ます。
1階がフルーツパーラー、2階が自習室の建物を目印に、左に曲がりましょう。
あとは「県立劇場通り」と名のついた道を真っ直ぐ進むだけです。会場は道路の右側なので、移動しておきましょう。
「変電所前」バス停を通過します。
左手に見えるハローワーク熊本の前を通過します。
「開新高校前」バス停を通過します。学校はハローワークの北に隣接しています。
右側にLEDビジョンのほか、珍しい「焼き芋」と「うなぎ」の自販機があります。
エニタイムフィットネスの建物を越えれば、会場はもうすぐです。
門の前に、最寄りの「県立劇場前」バス停があります。
右に曲がったところが、会場の正面玄関です。お疲れさまでした。
JR水前寺駅から会場までの徒歩ルート
JR水前寺駅からの徒歩ルートも合わせて紹介しておきます。JR水前寺駅は、熊本駅からJR豊肥本線(ほうひほんせん)に乗って4駅目の駅です(所要時間約10分)。
途中で先ほどの味噌天神前からのルートと合流するので、合流地点までの紹介です。
水前寺駅の改札です。ICカードタッチの簡易版で、切符は窓口で回収します。
左を向いたところが改札前の通路です。
通路を直進して、突き当たりを左に曲がり北口に向かいましょう。
北口への連絡通路を移動します。
北口への階段を下ります。
一応案内板に会場名とバスのりばを確認することができます。
北口ロータリーにも、会場まで760mの案内があります。
さて、ロータリー左奥の公園に面した道路沿いに、会場方面に向かうバス停(3番)があるのですが…。
ご覧の通り、ほとんど運行本数がなく、全く使い物になりません(笑)。
ということで、バス停には構わずに通過しましょう。
公園の端まで来たら、前の道を右に曲がります。
曲がった先に見える道路を、今度は左に曲がります。
ほどなく、先ほどの味噌天神からのルートで出てきたフルーツパーラーと自習室の建物が右奥に見えます。
道路を右に曲がれば、「県立劇場通り」に合流するので、後は同じルートで会場に到着します。
JR熊本駅からのバス・市電ルート
新幹線で熊本駅まで来た場合は、先ほど紹介した在来線でJR水前寺駅まで向かうか、バスや市電で最寄りの「県立劇場前」バス停に向かうことになります。
新幹線熊本駅の改札口です。
改札を出たら、向かって左側の白川口(東口)に移動します。
在来線の改札口前を通過します。在来線で水前寺駅まで向かうこともできます。
出口近くにあるスターバックスコーヒーです。
そのまま駅前広場を真っ直ぐ行くと、市電のりばがあります。
出口を左に曲がると、バスのりばです。
熊本駅前から会場まで直通のバスルートはありません!
冒頭に述べたように、この会場は「桜町バスターミナル」がアクセス拠点となります。熊本駅前から最寄りの「県立劇場前」バス停までは、直通で行くことができません。
熊本市内のバスは、「九州産交バス」「熊本都市バス」「熊本電鉄バス」「熊本バス」など4つの事業者により運行されています。
熊本駅前へは各社が乗り入れているのですが、県立劇場前バス停に停まる路線は、熊本都市バスのみが別系統で桜町バスターミナルから運行しているため、乗り換え・乗り継ぎが必要になります。
熊本駅前から市電または路線バスで、桜町バスターミナルに向かいましょう。
市電で桜町バスターミナルへ
桜町バスターミナルに向かう際、最も分かりやすいのは、市電で最寄りの「辛島町(からしまちょう)」電停まで移動する方法です。バスのように系統を問わず、熊本駅前から出るすべての電車が停車します。
市電は駅前広場に一番近い、3番のりばから発車します。
最寄りの「辛島町」電停は熊本駅前から5つ目です。
運賃は均一で、片道170円です。
「辛島町」電停に着きました。所要時間は約13分です。
このあたりが熊本一の繁華街で、道を渡った所にサンロード新市街があります。
桜町バスターミナルは反対側で、花畑広場を挟んだ奥にあります。
路線バスで桜町バスターミナルへ
次に、路線バスで桜町バスターミナルに向かう方法を紹介します。
熊本駅前から出発する路線バスの多くの系統が停車するので、それぞれ路線図を確認して停車することが分かれば、そのまま乗車して向かいましょう。
ちなみに下の写真は、1番のりばから出発する系統別の路線図です。様々な系統がありますが、どの路線も桜町バスターミナルを通ることがわかります。
熊本駅前から桜町バスターミナルまでの所要時間は約15分、運賃は片道160円(まちなかループバスは150円)です。
桜町バスターミナルから県立劇場前バス停へ
桜町バスターミナルは、冒頭にもお伝えしましたが、サクラマチクマモトという複合商業施設の中にバスターミナルがあるといった感じで、初めて訪れた時点では全容を把握するのが難しいと思います。
出典:サクラマチクマモト公式サイトより
桜町バスターミナルに着いたら、数あるのりばの中から15番のりばを探します。ひとまずは青色の案内表示ののりばに向かうことを意識してください。
バスは1階から出発しますが、まずはサクラマチクマモトの2階に向かいましょう。
青い表示の「14−23」と書かれた案内表示に従い、1階のバスターミナルに移動します。
エスカレーターを下ります。
下りた所から15番のりばに移動しました。
さて、15番のりばから出るすべてのバスが、最寄りの「県立劇場前」バス停を通るわけではなく、「F3・G3」(F3-1,F3-2,G3-1,G3-2)という2系統(4路線)のみ、「県立劇場前」に停車します。
土日祝日の時刻表を見ると、日中はだいたい1時間に3本ほど出ていることがわかります。
所要時間約20分で、徒歩ルートでも紹介した会場正面の「県立劇場前」バス停に到着です。お疲れさまでした。
熊本県立劇場はこんな所
約1,800席のキャパを誇るコンサートホール
コンサートホールの総客席数は1,810席で、1階席(1,186席+車椅子5席)、2階席(257席+車椅子3席)、3階席(359席)に分かれています。
残響時間は約2秒で、クラシック向きの音楽専用ホールです。
1階席は1列から31列まであり、途中、18列目と19列目の間に中央通路があります。1列目から4列目まではフラット、5列目以降に段差が付けられています。
中央通路から後方は幾分傾斜角度が付けられていますが、全体としては緩やかな構造になっています。
2階席は合計260席と少なめで、正面スタンド席の奥行きは3列分までしかなく、左右にせり出したバルコニー席(L1,L2,R1,R2席)が主体になっています。
バルコニー席の先端は、1階席の中央通路よりも前に来ており、高さもあって見やすい席だと思います。
3階席は正面スタンドのみの構成で、奥行きは8列まであります。
コンサートホール 座席表
出典:熊本県立劇場公式サイトより
座席
座席は茶色の基礎とひじ掛けにグレーのファブリック素材の座面・背もたれの組み合わせです。適度な硬さで疲れにくく、長時間の鑑賞に堪えられます。
どこからでも演者の顔を見やすい演劇ホール
演劇ホールは、「地階」「1階」「2階」の三層構造で、総客席数は1,172席あります。大ホールの位置づけのコンサートホールに対し、演劇ホールは中ホールにあたりますが、それでも1,000席を超える収容能力があります。
名前のとおり、オペラ、バレエ、演劇などの舞台芸術向きのホールで、最後列からでも演者の表情が見えるよう、舞台と客席の距離を計算して設計されています。
地階席(1階1列~16列)
通常のホールの1階席に相当する地階席は、いわゆる歌舞伎劇場で言うところの平土間席で、総客席数は1列から16列までの421席あります。
オーケストラピットに変わる1列目から3列目まではフラットで、4列目から段差が付きます。上の写真のとおり、右サイドの最後列(15列)の4席分が車椅子席になっています。
1階席(1階8列~24列)
1階席の総客席数は291席(うち車椅子席7席)で、通常のホールの2階席に相当します。
平土間の地階席を取り囲むような構造のため、左右のバルコニー席のような部分の8列目を先頭に、スタンド最後方の24列まであります。
左右のバルコニー席部分は8列から16列まで、正面のスタンド部分の最前列は17列になります。
2階席(1列~6列)
2階席は同様に通常の3階席に相当し、総客席数は284席あります。奥行きは6列目まであり、1・2階席に比べかなり傾斜が付けられています。
また、2階席のみ、座席の背もたれが頭部までカバーするハイバック仕様になっています。
地階〜2階席の高低差を俯瞰で見ると下のような感じになるので、参考にしてください。
演劇ホール 座席表
出典:熊本県立劇場公式サイトより
座席
演劇ホールの座席も、メインホールと全く同じ形状・材質です。
エントランス等
出典:熊本県立劇場公式サイトより
会場のエントランスホールは、バス停から続くプロムナードを通ったところにあります。
打ちっぱなしのコンクリート柱や、カーペットを思わせるようなデザインのタイルが印象的で、古き良き佇まいを感じさせる作りです。
レストラン「七彩」
エントランスホールの右側にあるのが、レストラン「七彩(ひちさい)」です。
公演前後のランチやディナーに最適で、ゆったり過ごすことができます。バンケットやケータリングサービスも行っています。
駐車場
会場内には約500台収容可能な駐車場があります。営業時間は8:30〜22:30で、1回あたりの利用は時間に関係なく400円(普通車)とお得です。
利用時間 8:30〜22:30
駐車台数 496台(普通車)
利用料金 普通車 400円 大型車 800円
アクセスのところで色々と書いてきましたが、この会場を訪れるのに最も便利なのは、はっきり言って車(レンタカー)だと思います。
周辺施設
ゆめタウン大江
会場と道路を挟んでほぼ向かいにあるのが、地元ショッピングモールの「ゆめタウン大江」です。
駅やバスターミナルから離れているので、公演前後の食事や持ち物の補充等に重宝します。
熊本城ホール
桜町バスターミナルに隣接というかターミナル内にあるのが、2019(令和元)年にオープンした熊本城ホールです。
メインホール(2,304席)とシビックホール(最大840席)のほか、展示ホールや各種会議室を備えているコンベンション・センターです。
市民会館 シアーズホーム夢ホール
熊本城ホールと熊本城の間にあるのが「市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)」です。
熊本城ホールと同じく桜町バスターミナル(またはその隣りの「花畑町」電停)から徒歩すぐの場所にあります。
約1,600席(1,591席)を収容する大ホールを有しており、熊本県立劇場がクラシックや演劇中心なのに対し、市民会館は比較的ポピュラー音楽のコンサートが多く行われる会場です。
施設概要・地図
所在地
熊本市中央区大江2丁目7番1号
アクセス
JR水前寺駅北口から徒歩約15分
JR熊本駅からバス約25分(都市バス・産交バス)
JR熊本駅から市電約30分
阿蘇くまもと空港からリムジンバス約40分
ホール
コンサートホール 総客席数:1,810席
(1階:1,186、2階:257、3階:359、車椅子:8)
演劇ホール 総客席数:1,172席
(地階:421、1階:456、2階:284、車椅子:11)
公式サイト
https://www.kengeki.or.jp/