ライブ遠征や観光で名古屋〜金沢間を移動する人を対象に、所要時間や金額、利便性などの点からアクセス方法を検討します。
結論としては、安く行くなら高速バスで往復、早く行くなら特急しらさぎ号+新幹線の組み合わせでOK。両者のメリット・デメリットを見極めて、より自分にとって便利な方を選ぼう。
交通手段 | 所要時間 | 金額(通常時) |
特急しらさぎ号 | 約3時間 | 片道6,280円〜7,460円 |
特急しらさぎ号 +新幹線自由席(米原ー名古屋間) | 約2時間30分 | 片道6,600円〜8,160円 |
高速バス (西日本JRバス・名鉄バス・北鉄バス) | 約4時間 | 片道4,500円、往復7,200円 |
意外に手間と時間がかかる鉄道アクセス
米原駅はJR西日本とJR東海の境界駅
名古屋駅と金沢駅はJRの管轄が異なっており、名古屋駅は「JR東海」エリア、金沢駅は「JR西日本」エリアになります。
出典:JRおでかけネット公式サイトより
ではどこで管轄が分かれるかというと、「米原駅」がその境界となります。
つまり、名古屋駅から米原駅まではJR東海ルート(東海道本線)、米原駅から金沢駅まではJR西日本ルート(北陸本線)ということになります。
アクセスを考える場合、まずこの前提を押さえておく必要があります。
特急しらさぎ号(+新幹線)を利用する場合
途中の「米原」止まりの列車の存在
管轄は違いますが、「名古屋ー金沢」間を直通で結ぶ電車に「特急しらさぎ号」があります。
ただし、金沢駅発の場合、行き先はすべて名古屋行きではなく、JR西日本エリアの終点である米原止まりの列車もあります。金沢ー名古屋直通のしらさぎ号の運行本数は、2時間に1〜2本程度になります。
シート転換等で停車時間が発生
また、金沢ー米原間と、米原ー名古屋間では、進行方向が逆になります。金沢からの場合、米原までは大阪方面に向かう線路を走っていましたが、米原からは反対の名古屋・東京方面の線路を走る(スイッチバックする)ことになるからです。
進行方向が変わるということは、運転席も前後で変わります。また、座席も反対方向に変更する必要があるので、乗務交代やシート転換のための停車時間が発生します。
米原〜名古屋間は新幹線自由席で移動しよう
名古屋ー米原間は、同じ区間を新幹線が走っているため、名古屋駅発の米原止まりのしらさぎ号はなく、新幹線のひかりやこだまで移動することになります。
米原から新幹線を利用する場合、終点までしらさぎ号を利用する場合に比べ、乗り換え時間込みで約30分短くなります。
指定席を利用する場合は別途指定席料金分が必要になりますが、回数券や往復切符の場合、追加料金なしで米原ー名古屋間の新幹線自由席を利用することができます。
いずれにしても、直通列車でない場合、金沢からも名古屋からも、米原で乗り換える必要が生じます。
特急サンダーバード号はすべて大阪ー金沢直通
これと比較すると、「大阪ー金沢」間を直通で結ぶ「特急サンダーバード号」は、すべてJR西日本の管轄エリアを走ります(大阪へは米原経由でなく敦賀経由で行きます)。
列車により停車駅の多いものと少ないものがありますが、途中の駅止まりになる列車はなく(一部金沢より先の七尾線「和倉温泉」まで行く便あり)、乗り換えの必要はありません。進行方向が変わることもありません。
このように、同じ鉄道会社が運行していないことの影響で、余分な手間と時間が発生していることがわかるかと思います。
※ただし、再来年の2024年春に北陸新幹線が敦賀駅まで延伸されると、大阪-金沢直通のサンダーバード号はなくなる見込みです。所要時間は短縮されますが、敦賀駅での乗り換えが必要になります。
北陸新幹線延伸工事の進む敦賀駅
企画きっぷや予約サイトより指定席回数券の方がお得
おでかけネットやエクスプレス予約の割引なし
運行する鉄道会社が分かれている問題は、運賃・料金面でも生じます。
金沢から大阪や東京に行く場合、運賃・料金はJR西日本の「e5489」や、JR東日本の「えきねっと」を利用すれば、ネット予約専用の割引運賃・料金が適用されます。
金沢から名古屋に行く場合も、もちろんネット予約は可能です。しかし、米原で分かれることで、直通の列車を予約しても、ネット割引が適用されないというデメリットがあります。
期間限定の往復割引きっぷ
名古屋ー金沢間は、JR西日本、JR東海からそれぞれ、「北陸往復割引きっぷ」「名古屋往復割引きっぷ」という企画商品が出ています。
どちらも同じ値段ですが、これを利用すれば、片道7,460円(閑散期)の定価に対し、往復13,200円(片道6,600円 有効期間:6日間)で利用することができます。
米原ー名古屋間は新幹線の自由席を利用できるので、定価の片道8,160円からさらに割引となり、往復で約3,000円程度の割引価格で利用できます。
回数券は金沢の金券ショップで買った方が少しだけ安いです
また、名古屋ー金沢間の指定席回数券は6枚つづりで37,680円。1枚あたり片道6,280円となり、鉄道を利用する場合の最も安い価格となります。
ただし、グループで利用しない限りは6枚つづりの回数券を買いにくいと思うので、片道または往復分をチケットショップで購入するという選択肢になると思います。
その場合の販売価格は6,300円~6,400円程度が相場となります。ちなみに名古屋と金沢の駅前の金券ショップを比較したところ、販売価格は名古屋で6,400円、金沢で6,310円(2021年12月現在)でしたので、金沢で買う方がちょっぴりお得になります。
金沢から名古屋は東京・大阪よりも遠い?
こうして見てくると、名古屋ー金沢の移動は地理的に近く感じる割には、思ったより時間やお金がかかる印象が強くなります。
先に述べたように、大阪へはサンダーバードで直通、東京へは北陸新幹線で同じく直通で行けるので、所要時間も大阪や東京とほぼ同じ(最短で約2時間30分)になります。
私は現在金沢に住んでいますが、大阪・東京・名古屋への移動に関しては、心理的に名古屋が正直最も遠く感じるようになりました。
高速バスを利用する場合
次に、高速バスを利用する場合について見てみましょう。
高速バスの名古屋ー金沢線は、昼行便を名鉄バス、北鉄バス、西日本JRバス、JR東海バスの4社が共同運行しており、予約サイトの「ハイウェイバスドットコム」で乗車券を購入できます。
また、夜行便は西日本JRバスとJR東海バスが運行(北陸ドリーム名古屋号)しており、「高速バスネット」で乗車券を購入できます。
昼行便の高速バスの往復利用がコスパ最強
高速バス昼行便の乗車券は通常で片道4,500円ですが、往復割引や(※)回数乗車券(4枚綴り)を使うと、往復で7,200円(片道3,600円)で、電車を使う場合の約半額の非常にリーズナブルな価格で利用できます。
※回数券(4枚綴り)は、2021年12月31日をもって廃止されることになりました。
夜行便はJR特急との組み合わせがおすすめ
夜行便の「北陸ドリーム名古屋号」は1日1往復で、名古屋と富山・金沢を結びます。
運賃は片道約5,000円前後で、往復割引がないことや昼行便に比べホテル代が必要ない分、行きまたは帰りのどちらかを電車にして組み合わせることで、コストパフォーマンスの高いアクセスが実現できます。
※開業当初は3列シート車両による運行でしたが、2021年11月1日より4列シート車両に変更されました。
所要時間:片道4時間をどう捉えるか
1泊2日のライブ遠征で効果を発揮
価格面で圧倒的に有利な高速バスですが、所要時間は電車の約2時間30分に対し、バスはさらに約1時間30分長い片道約4時間です。往復で約8時間の長旅となり、日帰りの場合1日の3分の1を移動に費やされることになってしまいます。
往復ともに高速バスを使う場合は、1泊2日のライブ遠征を行う際に利用するのが、最もコストパフォーマンスが高いのではないでしょうか。
電車との差額が約7千円あるので、「ホテル代が1泊タダ」と解釈することができます。
サービスエリアの休憩時間でリラックス
高速バスのもう1つのメリットは「乗り換え」がないこと。特に荷物が多い時は乗り換えに伴う移動がないことはありがたいです。
座席幅は比較的ゆったり
膝の上にPCを置いて作業可能です
バスの車内は電車に比べ多少は窮屈に感じますが、途中のサービスエリアで15分程度の休憩時間があるので、そこでリラックスすることが可能です。トイレ休憩や簡単な飲食の時間も確保できます。
ちなみに名古屋ー金沢線の休憩サービスエリアは福井県の「南条SA」です。
北陸道「南条SA」。飲食・物販施設のほか、スターバックスやコンビニ、道の駅などもある大きなサービスエリアです。
所要時間、金額以外に注意すべきポイント
アクセスについて、所要時間や金額以外に注意しておくべきポイントを以下にまとめます。
鉄道(特に在来線)は天候の影響を受けやすい
ライブ遠征で最も注意すべきポイントは、台風や大雪などの悪天候で不通となった場合の対応です。
意外に思うかもしれませんが、こと北陸方面に関しては、高速バスより電車のほうが運休リスクが高くなります。
JR北陸本線は、高架上や琵琶湖沿岸を走る路線の特性から、強風等で徐行運転や運転見合わせが結構な頻度で発生します。特に冬場は、石川県をはじめとする北陸地方の晴天率の低さで、風と雪に悩まされることが多くなります。
これは、特急サンダーバード号でJR敦賀駅から湖西線経由で関西方面に向かう場合も同様です。
バスは道路渋滞のリスクあり
高速バスも道路の通行止め等により運休することもありますが、鉄道ほど天候の影響を受けることは少ないと思います。
以前、金沢から大阪にライブ遠征に出かけようとした際に、台風接近で行きのサンダーバード号が運休になったことがありました。
台風は通過済みで晴れていましたが、線路の安全確認等に時間を要し、特急の運行再開はその日の夕方以降になることが決まっていました。
遠征のキャンセルも考えましたが、高速バスの午前便に乗れば間に合うことがわかり、運良く当日に予約して無事ライブを鑑賞できたことがありました。
その一方で、バスの場合は常に走行する高速道路の混雑や事故等による渋滞が発生するリスクについて、常に考えておく必要があります。
コンセント・フリーWi-Fiの有無
もう1点、交通アクセスについて地味ながら外せない要素があります。
鉄道でも片道約2時間30分、バスだと4時間の長旅になるので、途中にスマホやタブレットで時間を過ごす人も多いと思います。そんなときに重宝するのが、車内における「コンセントやフリーWi-Fiの有無」です。
特急しらさぎ号は両方設置されていません
しかし、特急しらさぎ号は残念ながら、車両にコンセント、フリーWi-Fiともに設置されていません。
パソコン等で作業を行う場合は、ポケットWi-Fiやスマホのテザリング機能で代用するしかありません。また途中にトンネルも多く、携帯の電波も届かない区間が結構あるのも難点です。
米原から新幹線に乗り換えれば、名古屋ー米原間の約30分間は、コンセント、フリーWi-fiを利用できます。
終点までしらさぎ号を使うと、時間が余計に30分かかるうえに、充電や通信ができないまま約3時間を過ごすことになるので、その意味でも、手間はあっても乗り換えるほうがいいと思います。
高速バスは両方完備!
対して、各社の車両により仕様は異なりますが、高速バスは両方完備されています。
コロナ前のインバウンド需要のおかげで、海外からの旅行者向けにフリーWi-Fiが急速に整備され、コンセントとともにバス車両の必須設備となりました。
片道約4時間は確かに長く感じますが、電車に比べて設備は恵まれているので、コスパ的にもメリットが大きいと思います。
名鉄バス車両のコンセント(窓側)。
通路側座席にも設置されています。
まとめ
以上、電車と高速バスのアクセスについて見てきましたが、結論としては、以下のとおりにまとめられます。
メリット | デメリット | |
電車 | ・目的地まで早く着ける ・車内空間の広さ | ・乗り換えが発生 ・価格が高い(割引が少ない) ・天候不良時の遅延・運休リスク |
高速バス | ・価格の安さ(特に往復利用時) ・乗り換え無しに目的地まで直通 ・車内設備の充実(コンセント・Wi-Fi) | ・車内空間の狭さ ・片道約4時間の長旅 ・道路渋滞時の遅延リスク |
上記の点を参考に、遠征日程が日帰りか1泊2日か、荷物の量、車内での過ごし方などを勘案して、自分にとって最もコストパフォーマンスの高いアクセス方法を見つけてください。
ライブ遠征の会場(ホール)別情報
他の記事で名古屋や金沢のホールに関する記事を書いているので、ライブ遠征先が決まった時の参考にご覧ください。