初めて「新国立劇場」のオペラ・バレエ鑑賞に訪れる人を対象に、会場までの行き方や施設の概要、現地での楽しみ方について紹介します。
日本でオペラ・バレエを観劇するなら、ここは外せません。年末恒例の「レコ大」の会場でもあります。
アクセスは最寄り駅直結で分かりやすいのですが、別の意味での「分かりにくさ」があります(後述)。
2022年1月1日。記念すべき新年最初のライブ現場は、初めての「バレエ」鑑賞。新国立劇場で「くるみ割り人形」を観てきました。
新国立劇場(しんこくりつげきじょう)は、現代舞台芸術のための唯一の国立劇場として、1997年10月にオープンしました(何故ふりがなを振ったのかは後で説明します)。
新国立劇場へのアクセス
初台駅=「京王新線」≒「都営新宿線」
新国立劇場の最寄り駅は「初台(はつだい)」駅。東京に住んだことのない方はあまり馴染みのない駅名かもしれません。
新国立劇場や東京オペラシティに用事のある時以外に下車する人はほとんどいないマイナーな駅なんですが、何線の駅かというと「京王新線」になります。
京王新線は、「新宿駅〜笹塚駅」までの区間を走る路線で、途中に「初台」駅と「幡ヶ谷(はたがや)」駅の2つがあります。
本線の新宿駅とは別の入口・ホーム
京王線(本線)の始発駅は新宿駅。電車に乗ると最初の駅は笹塚駅となり、初台駅には行きません。
実は京王新線は、本線の新宿駅ではなく、別の場所にある専用ホームから乗車します。そのため、「(京王)新線新宿駅」という呼ばれ方をしています。
これは元々の成り立ちが、都営地下鉄新宿線との相互直通運転用の駅として整備されたことに由来しています。元々の新宿駅には乗り入れるスペースがなかったようです。
感覚的には、京王電鉄の駅というよりも、都営新宿線の終点が新宿駅から笹塚駅まで延伸したというイメージの方が近いかもしれません。
オペラ・バレエにちなんだ列車接近メロディー
初台駅の列車接近メロディーは、2015年から新国立劇場と提携し、オペラやバレエの名曲のフレーズが採用されています。
ちなみに2021年〜22年の年末年始は、毎年クリスマスシーズンに上映される「くるみ割り人形」の「行進曲」のメロディーが採用されています(タッ・タララ・ラッタ・タッタッター♬のやつです、わかりますかね?)。
意外に難しい東京駅からのアクセス
地方からの遠征で新国立劇場に向かう場合、多くは東京駅から新宿方面の電車に乗ることになると思います。
初台駅は京王新線の駅なので、当然乗り換える必要があります。このアクセスが馴染みのないルートを使うことになるので、いくつか紹介します。
新宿駅での乗り換えルート(JR中央線・京王新線)
最もオーソドックスなルートは、東京駅からJR中央線で新宿駅まで行き、京王新線に乗り換えるルートです。北陸・東北新幹線であれば、大宮駅から湘南新宿ラインで新宿駅まで向かうことになります。
所要時間は乗り換え含め約30分、運賃は最安の324円(ICカード使用)になります。
地下鉄での乗り換えルート
初台駅は都営新宿線が乗り入れているので、地下鉄(東京メトロ)の東京駅や大手町駅から都営新宿線の乗り換え駅経由で向かう方法もあります。
所要時間は乗り継ぎ時間により変わりますが、概ね30分程度になります。運賃は同じ地下鉄でも東京メトロと都営地下鉄を乗り継ぐので402円(ICカード使用)になります。
地下鉄乗り換えルートの例
東京駅から
・丸ノ内線淡路町駅・都営新宿線小川町駅乗り換え
※駅名は違いますが、淡路町駅と小川町駅は乗り継ぎ駅です
・丸ノ内線新宿三丁目駅乗り換え(→都営新宿線)
大手町駅から
・半蔵門線神保町駅乗り換え(→都営新宿線)
・東西線九段下駅乗り換え(→都営新宿線)
新国立劇場は「中央口」、東京オペラシティは東口
初台駅で下車後、案内看板を見ると「 新国立劇場:中央口 」「 東京オペラシティ:東口 」と表示されているので、中央口の方に向かいましょう。
仮に間違えて地上に出たとしても、両者の建物をひと目見れば違いがわかります。
ホールの形をしているのが新国立劇場、高層タワーになっているのが東京オペラシティと区別しましょう。
駐車場は地下1階・2階
駐車場は、「タイムズ新国立劇場・東京オペラシティビル」という共用の駐車場があります。営業時間は7:00~23:30で、料金は30分ごとに300円です。
地下1階の様子
エントランスへはEVで直結です
新国立劇場はこんな所
主にオペラ、バレエ、演劇の演目を中心に、オペラパレス(オペラ劇場)、中劇場、小劇場の3つのホールを活用して、年間約300ものステージを開催しています。
オペラパレス(オペラ劇場)
オペラパレス(オペラ劇場)は文字通りオペラやバレエをメインに使用されるので、他の多目的ホールとは違い、オーケストラピットは常設です。客席と入れ替わるような作りにはなっていません。
バルコニー席(左)
バルコニー席(右)
オペラパレス座席表
出典:新国立劇場公式サイトより
オペラパレスの収容人数は1,814席。座席表のとおり、客席は1階席から4階席までの4層構造になっています。
それぞれの席からのステージの見え方については、公式サイトに「ぴあ」や「Googleストリートビュー」のリンクがあるので、そちらを参考にするのがわかりやすいです。
建設時の客席数を巡る論争
オペラパレス(オペラ劇場)の観客席数については、新国立劇場が建設される際に「見やすさと音響」を考え少なめに取るか、「費用対効果」を考えできるだけ多く取るかで論争になり、結局、現在の「少なめ」の客席数に落ち着いた経緯があります。
多めの客席数を希望していた「日本舞台芸術振興会(NBS)」は、国内で数多くのオペラ公演を手掛けていますが、この一件もあってか、新国立劇場を使用したオペラ公演を実施していないそうです(多くの公演は「東京文化会館」で開催)。
中劇場
出典:新国立劇場公式サイトより
舞台・ダンス中心に可変する構造
出典:新国立劇場公式サイトより
中劇場は、上の図や画像のとおり、「主」「奥」「上手」「下手」の四面舞台を基本に、前舞台を観客席として使用する「プロセニアム方式」と段階的に前方までせり出して使用する「オープン形式」で多様に活用することができます。前舞台は、オーケストラピットとしても使用可能です。
観客席は最大で1,038席(1階:851、2階:187 プロセニアム形式)で、1列あたりの配席は最大24席です。また、ステージまでの距離が2階席の最後列からでも約25mしかなく、臨場感あふれるステージを体感できます。
1階席・2階席ともにステージを要に放射状(扇形)に広がっており、オペラパレスのようなバルコニー席はありません。
座席レイアウトは5パターンあり、公演により異なります。公式サイトや貸劇場公演の主催者に確認しておくとよいでしょう。
ちなみに公式サイトには、主催公演や貸劇場公演(劇場主催以外の公演)について、ホールごとの座席表やGoogleストリートビューが紹介されていますので、参考にしてください。
中劇場 座席表(サンプル)
出典:新国立劇場公式サイトより
年末恒例:TBS「レコード大賞」の会場
中劇場は、年末恒例のレコ大こと「輝く!日本レコード大賞」の会場として、2004年から2022年まで使用されています。
過去には渋谷公会堂や帝国劇場、日本武道館、TBS放送センターなどでも開催されていました。
小劇場
出典:新国立劇場公式サイトより
小劇場は上の図のとおり、劇場全体が可変式のステージになっています。客席数は最大468席(アリーナステージ)で、主に舞台演劇に使用されることが多くなっています。また、小さいながらも壁面にはバルコニー席が配置されています。
エントランスロビー・ホワイエ
総合インフォメーション
各会場のエントランスは、オペラパレスと中劇場が2階にあり、小劇場は1階にあります。
写真は2階エントランスを入ったところにある総合インフォメーション(チケットオフィス)です。当日券等の購入や引換えの人が列を作っています。
シアターショップ
インフォメーション横にあるシアターショップです。各種お土産品やプログラム、映像ソフトなどが揃っています。
エントランス
古代エジプト調?のオブジェが出迎えてくれます。記念写真を撮っている来場者の方が多いです。
オペラパレスのエントランス。直進すればホワイエ、左に曲がるとカフェがあります。
ホワイエ(オペラパレス)
左側が1階席への入口になります。
カフェバー
会場内の飲食スペースについて紹介します。開演前や幕間の時間に、この日(2022年1月1日)は、軽食やアルコール・ソフトドリンクを注文できる場所が2カ所ありました。
ホワイエ内にもブッフェのスペースがありましたが、営業していませんでした。普段(雨の日?)は室内で販売しているのかもしれません。
テラスブッフェ
テラスブッフェは、オペラパレス内のホワイエから外のテラスガーデンに出たところにありました。
入口横にある池を隔てて、オペラパレスのホワイエの対面にテラスガーデンがある位置構造になっています。
アルコールはテラスブッフェのみで販売していました。
ブリッジカフェ
ブリッジカフェは、その名の通りエントランスを入って左に進んだところにある橋(ブリッジ)の部分にあり、中劇場とオペラパレスを隔てる所に位置しています。
橋の途中に飲食スペース用のテーブルが設置されています。
レストラン「マエストロ」
出典:ダイナックジャパン店舗情報サイトより
会場の3階にイタリアンレストラン「マエストロ」があります。
オペラやバレエの観劇後に利用できるよう、ホワイエ内で予約受付を行っていました。
新国立劇場と紛らわしい施設を区別する方法
冒頭に、この会場は「別の意味で分かりにくさがある」と述べました。
それは、東京にあまり詳しくない人にとって、「新国立劇場」と混同するような紛らわしい施設が複数存在していることに起因しています。
以下に、その具体例と区別の仕方について、紹介します。
東京オペラシティは「クラシック」の会場です
まずは、アクセスの所でも触れた隣接する「東京オペラシティ」。施設内には「コンサートホール」と「リサイタルホール」の2つのホールがあります。
コンサートホールは「タケミツメモリアル」というサブネームが付いた、パイプオルガンの設置されたクラシック専用ホールです。客席数は最大1,632席あります。
リサイタルホールは、ソロ・リサイタルや室内楽コンサート向きのホールで、客席数は265席です。
オペラシティと銘打ってはいますが、どちらもクラシック向けのホールで、オペラの上演はできない構造です。
東京オペラシティは「クラシック」、新国立劇場は「オペラ・バレエ」で覚えましょう。
国立劇場(半蔵門)は「歌舞伎」の会場です
新国立劇場というからには、当然本家の「国立劇場」が存在します。
国立劇場は千代田区にあり、最寄り駅は地下鉄「半蔵門」駅(またはその隣りの「永田町」駅)になります。東京オペラシティと違い、場所が少し離れているので、間違えないようにしましょう。
国立劇場は主に「歌舞伎」をメインに行います(小劇場では雅楽等の「邦楽」も上演します)。
国立劇場は「歌舞伎」、新国立劇場は「オペラ・バレエ」で覚えましょう。
ちなみに落語や講談を上演する「国立演芸場」は国立劇場に隣接(東京都千代田区)、文楽や日本舞踊を上演する「国立文楽劇場」は東京ではなく大阪(大阪市中央区)にあるので、十分注意しましょう(笑)。
帝国劇場(日比谷)は「舞台・ミュージカル」の会場です
劇場で言えば「帝劇」こと「帝国劇場」もあります。所在地は東京都千代田区で、最寄り駅は地下鉄「日比谷」駅になります。
こちらは一応、オペラ、クラシック、ミュージカル等の上演が可能なホールですが、演目のほとんどは舞台やミュージカルで占められています。
帝国劇場は「舞台・ミュージカル」、新国立劇場は「オペラ・バレエ」で覚えましょう。
国立(くにたち)音楽大学は「立川市」にあります
劇場とは関係ないですが、国立(くにたち)音楽大学という、よく国立大学と勘違いされる私立大学があります。
以前は東京都23区外の国立(くにたち)市にキャンパスがありましたが、今は立川市に移転しています。ちなみに付属高校は現在も国立市にあります。
国立(こくりつ)ではなく国立(くにたち)、国立市ではなく立川市、ややこしや~。
施設概要・地図
所在地
東京都渋谷区本町1丁目1番1号
アクセス
京王新線「初台」駅下車(中央口直結)
(都営新宿線乗入れ、京王線は止まりません)
ホール
オペラパレス 1,814席(車椅子8席含む)
(1階:868、2階:354、3階:292、4階:300)
中劇場 最大1,038席(1階:851、2階:187)
小劇場 最大468席(アリーナステージ)
公式サイト
https://www.nntt.jac.go.jp/